行政書士 加治屋事務所

認知症前に考える財産管理対策

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【親が認知症になる前に】 家族信託と成年後見制度(法定・任意)、早めの検討がカギとなる理由

【親が認知症になる前に】 家族信託と成年後見制度(法定・任意)、早めの検討がカギとなる理由

2025/12/26

こんにちは、東京都中央区日本橋にて在留資格と遺言・相続手続きを専門で扱っている行政書士 加治屋事務所です。

親御様が元気なうちに、将来の介護や医療、そして財産管理について話し合うことは、非常に重要です。特に、認知症などで判断能力が低下した場合、「親の預金が凍結されて生活費や介護費用が引き出せない」といった深刻な問題が発生するリスクがあります。

このような事態を防ぎ、親御様の生活と財産を守るための代表的な制度が「家族信託」と「成年後見制度」です。成年後見制度には、判断能力低下後に始まる「法定後見」と、事前に準備する「任意後見」の二種類があります。

本記事では、これら三つの制度の基本的な違いと、なぜ親御様の判断能力が確かなうちに、これらの対策を検討することがカギとなるのかを解説します。

 

1. なぜ「認知症になる前」の対策が必要なのか?

 

親御様が認知症などにより法的な判断能力を失った場合、法的な手続き(例:不動産の売却、アパート経営のための大規模修繕、銀行口座からのまとまった額の引き出しなど)ができなくなります。

これらの手続きを行うには、家庭裁判所に成年後見制度の利用を申し立てる必要があります。しかし、一度制度が始まってしまうと、親の財産を柔軟に、家族の意思で管理・運用することが難しくなります。

そのため、親が元気なうちに「誰に」「どのように」財産を託すかを決めておく「家族信託」や「任意後見」といった生前対策が、理想的な対策となります。

 

2. 財産管理の主要な3つの制度を比較

 

親の財産管理の対策として検討される「家族信託」「法定後見」「任意後見」の主な特徴を比較します。

比較項目 家族信託 成年後見制度(任意後見) 成年後見制度(法定後見)
開始時期 本人の判断能力がある間に契約を結んで開始。 本人の判断能力がある間に契約を結び、判断能力低下後に開始。 本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所への申し立てにより開始
制度の目的 特定の財産を家族の意向に基づき柔軟に管理・運用。 本人の権利保護。管理者を本人が事前に指定できる。 本人の権利と財産を保護(家庭裁判所が管理者を選定)。
財産の管理者 家族(子など)を受託者として自由に選任できる。 本人が選任した人(任意後見人) 家庭裁判所が、親族または専門職を選任する。
財産の使途 契約の範囲内で、積極的な運用や組み替えが可能。 契約で定めた範囲内で、本人の生活・療養看護に必要な費用を支出。 本人の生活・療養看護に必要な費用に限定。積極的な運用は原則不可。
裁判所の関与 少ない。法的な登記手続きのみ。 比較的少ない。(開始時と、後見監督人による監督)。 常に監督下に置かれ、重要な財産処分には許可が必要。

 

 

 

3. 「家族信託」と「任意後見」の選択肢

 

法定後見が「すでに判断能力がない場合の最終手段」であるのに対し、家族信託と任意後見は「判断能力があるうちに準備する生前対策」です。

 

家族信託:柔軟な財産運用を目指すなら

 

家族信託の最大の強みは、その柔軟性と継続性にあります。

積極的な管理・運用が可能: 契約の範囲内であれば、「親の自宅を売却して介護施設の資金にあてる」「賃貸アパートを修繕する」といった、財産の維持・運用に関する積極的な行為も可能です。

財産の凍結回避: 財産の管理権が子(受託者)に移っているため、親が認知症になっても銀行口座などが凍結される心配がありません。

二次相続以降の指定: 財産を託す人を、親の死後、さらにその次の世代まで指定(二次相続)できるため、長期的な財産承継計画を立てられます。

 

任意後見制度:身上監護と権限を指定したいなら

 

任意後見制度は、財産管理の柔軟性では家族信託に及びませんが、**「身上監護(生活・介護・医療面の手続き)」**のサポートに優れています。

後見人を選べる: 誰を後見人にするか(子、専門家など)を本人が元気なうちに契約で指定できます。

身上監護が可能: 介護サービスや施設の入退所契約、医療同意など、生活に関わる法律行為を後見人が代理できます。

公正証書での契約が必須: 任意後見契約は必ず公正証書で作成しなければならず、方式の不備で無効になるリスクがありません。

 

4. まとめ:対策の分岐点と早めの相談の重要性

状況 最適な制度 選ぶ理由
親が元気なうちで、財産の積極的な運用や相続対策も視野に入れたい 家族信託 柔軟な運用と長期的な財産承継の設計が可能。
親が元気なうちで、後見人を選んで、生活や介護のサポートを任せたい 任意後見制度 本人の意思で後見人を指定でき、身上監護に強い。
既に認知症が進行し、判断能力が失われている 法定後見制度 唯一の選択肢。本人の権利保護を目的とし、裁判所が後見人を選定する。

家族信託や任意後見契約は、親御様に契約内容を理解し、判断できる能力がなければ成立しません。**対策の期限は、親の判断能力が確かな「今」**です。

将来の選択肢を狭めないためにも、親御様が元気なうちに家族で話し合いの場を持ち、専門家(行政書士など)に相談することが、スムーズで安心できる対策への第一歩となります。

初回面談はオンラインにて一時間無料で実施しています。お気軽にご相談ください。

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