「生前贈与された財産は『持ち戻し不要』?〜知っておきたい『持ち戻し免除の意思表示』とは〜」
2025/09/12
こんにちは。東京都中央区日本橋の行政書士加治屋事務所です。
前回の記事では、特定の相続人が生前贈与を受けていた場合に、公平な遺産分割のために贈与された財産を相続財産に加える「特別受益の持ち戻し」について解説しました。
しかし、この「持ち戻し」には例外があります。それは、被相続人が「この財産は、持ち戻さなくてもよい」という意思表示をしていた場合です。これを「持ち戻し免除の意思表示」と言います。
今回は、この「持ち戻し免除の意思表示」について、その要件や実務上の注意点を詳しくお話しします。
1. 持ち戻し免除の意思表示とは?
持ち戻し免除の意思表示とは、被相続人が生前贈与や遺贈をした際に、「この贈与は、他の相続人との相続分を計算する際に含めなくてもよい」という意思を表明することです。
この意思表示がある場合、生前贈与された財産は特別受益として扱われず、持ち戻しの計算は行いません。その結果、その財産は贈与を受けた相続人だけのものとなり、他の相続人はその財産を遺産分割の対象とすることができません。
2. 持ち戻し免除の意思表示の要件と注意点
では、どのような場合に持ち戻し免除の意思表示が認められるのでしょうか。
書面による意思表示 最も確実な方法は、遺言書にその旨を明確に記載することです。
例えば、「長女〇〇に生前贈与した土地については、特別受益の持ち戻しを免除する」といった文言を記載することで、明確な意思表示となります。
口頭による意思表示 口頭での意思表示でも法的には有効とされています。しかし、これは実務上、大きな問題となります。 なぜなら、他の相続人が「そのような話は聞いていない」と主張した場合、その意思表示があったことを証明するのが非常に難しいからです。
裁判になった際、「父はそう言っていた」と主張しても、客観的な証拠がなければ認められないケースがほとんどです。そのため、安易な口約束は後々のトラブルの火種となりかねません。
贈与の性質による判断 裁判例では、贈与の性質や金額、被相続人の財産状況などを総合的に考慮し、黙示の意思表示があったと判断されるケースもあります。 しかし、これはあくまで例外的な判断であり、明確な意思表示がない限り、基本的には持ち戻しの対象となると考えるべきです。
3. 遺産分割協議と持ち戻し免除の意思表示
先日お手伝いしたケースでは、幸いにも長女の方が「持ち戻し」に納得してくださり、円滑な協議を進めることができました。
しかし、もし被相続人が生前に「この土地は長女にあげたものだから、他の相続財産とは別で考えてくれ」と口頭で話していたとしたらどうでしょう。
この場合、長女は「持ち戻し免除の意思表示があった」と主張するかもしれません。一方、他の相続人は「そんな話は知らない」と反論し、協議は難航した可能性が高いです。
遺産分割協議をスムーズに進めるためには、このように揉める可能性のある要素を事前に排除しておくことが大切です。
最後に
持ち戻し免除の意思表示は、被相続人が特定の相続人に多く財産を分け与えたい場合に有効な方法です。しかし、その意思は明確な形で残さなければ、かえって相続人間で紛争を引き起こす原因となり得ます。
円満な相続を実現するためには、遺言書を活用し、財産分配に関するご自身の意思を明確にしておくことが何よりも重要です。
事案により、提携している司法書士、税理士、土地家屋調査士、弁護士とで対応します。
「当事務所では無料相談を行っております」遺産分割でお困りの際は、ぜひ一度、加治屋事務所にご相談ください。
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