留学生の資格外活動時間超過が招いた許可遅延事例 ~申請人・大学・雇用主が知っておくべきポイント~
2025/10/10
こんにちは、東京都中央区日本橋にて在留資格を専門に扱っている行政書士 加治屋事務所です。今回は、留学時の資格外活動許可について、事例を元に記事を書いていきますので、参考にしてください。
はじめに
留学生の資格外活動許可は、多くの留学生にとって学業と並行して生活費を稼ぐ重要な制度です。しかし、規定時間を超過してしまうことで、その後の許可申請に大きな影響を与えるケースが少なくありません。今回は、台湾国籍の女子留学生の事例を通じて、資格外活動時間超過がもたらす影響と、申請人・大学・雇用主それぞれが注意すべきポイントについて解説します。
事例の概要
申請人: 台湾国籍、22歳女性
在留資格: 留学
状況: 大学留年により在留期間更新許可申請を行い許可取得。ただし、過去に資格外活動許可の就労時間を大幅に超過していた期間があり、更新時に提出した資格外活動許可申請が長期間審査中の状態が続いている。
申請人(留学生)への影響と対策
直面する問題
- 収入源の断絶
資格外活動許可が下りないため、アルバイト収入が得られない状況が続いています。 - 心理的負担
許可が下りるかどうかの不安から、学業にも集中しにくい状況となっています。 - 今後の在留資格更新への不安
過去の違反履歴が今後の更新にも影響する可能性があります。
留学生が取るべき対応
- 正確な記録の保持:就労時間の詳細な記録を必ず残す
- 定期的な確認:月末には必ず労働時間を集計し、上限を確認する
- 早期相談:時間超過の可能性がある場合は、速やかに専門家に相談する
- 誠実な対応:違反が発覚した場合は、隠蔽せず適切に対処する
大学側の責任と対応
大学が果たすべき役割
- 適切な指導
入学時および定期的に、資格外活動に関する正しい知識を提供する必要があります。 - モニタリング体制
留学生の就労状況を把握し、問題が生じた際には適切に指導する体制を整える必要があります。 - サポート体制の充実
経済的困窮により就労時間超過が生じないよう、奨学金制度等の支援を検討することも重要です。
今後の改善点
- 資格外活動に関するガイダンスの充実
- 定期的な面談による就労状況の確認
- 問題発生時の迅速な対応体制の構築
雇用主の注意点と責任
雇用主が負う責任
- 在留資格の確認義務
採用時には必ず在留カードと資格外活動許可書の確認を行う必要があります。 - 労働時間の適切な管理
週28時間(長期休業期間中は1日8時間)の上限を遵守させる管理責任があります。 - 記録の保持
留学生の労働時間を正確に記録し、管理する必要があります。
雇用主が取るべき対策
- システム化された時間管理:タイムカードやシフト管理システムの活用
- 定期的な確認:月末における労働時間の集計と本人への通知
- 複数アルバイト先の把握:他でも働いている場合の情報共有
- 教育・研修:雇用する留学生に対する適切な指導
行政書士による早期介入の重要性
本事例では、行政書士による指摘により時間超過が是正されましたが、これは非常に重要なポイントです。
早期相談のメリット
- 被害の最小化:違反期間を短縮できる
- 適切な対処方法の指導:個別の状況に応じた対応策の提示
- 今後の申請への影響軽減:適切な説明書類の準備
専門家活用のタイミング
- 時間超過の可能性に気づいた時点
- 在留期間更新前の事前相談
- 資格外活動許可申請時
入管からの追加書類要求とその対応
申請から2か月後の展開
本事例では、申請から2か月が経過した時点で、入管から以下の追加書類の提出が求められました
- 直近1年間の給与明細
- 総労働時間が分かるタイムカード
- 賃金台帳
追加書類要求の意味するもの
この要求は、入管が以下の点を詳細に調査していることを示しています
労働実態の全容把握
- 月ごとの労働時間の推移
- 時間超過の頻度と程度の確認
- 違反期間の特定と改善状況の検証
違反の悪質性判断
- 継続的・故意的な違反だったのか
- 一時的・偶発的な違反だったのか
- 改善への取り組み姿勢の評価
現在の遵守状況確認
- 行政書士による指摘後の改善状況
- 現在の就労状況が適法範囲内か
- 再発防止策が機能しているか
書類準備時の重要ポイント
申請人側の対応
- 正確性の確保:記録に不備や矛盾がないよう慎重に準備
- 時系列の整理:違反期間と改善期間を明確に区分
- 説明書の添付:各期間の状況について詳細な説明書を作成
雇用主の協力体制
- 記録の提供:正確なタイムカードと賃金台帳の作成
- 証明書の発行:労働条件や改善状況に関する証明書
- 今後の管理体制:再発防止策の具体的説明
審査における評価ポイント
プラス要素
- 行政書士指摘後の迅速な改善
- 雇用主の協力的な対応
- 大学の適切な指導体制
- 本人の反省と改善意識
マイナス要素
- 違反期間の長さ
- 超過時間数の多さ
- 改善への取り組みの遅れ
- 記録管理の不備
今後の見通しと対策
書類提出後の流れ
- 詳細審査の実施:提出書類を基にした総合的な判断
- 面接の可能性:必要に応じて本人面接が実施される場合
- 最終判断:許可・不許可の決定(通常1-2か月程度)
許可獲得のための戦略
- 包み隠さない姿勢:違反事実を隠蔽せず、真摯に対応
- 具体的改善策:今後の時間管理方法を具体的に提示
- 関係機関の協力:大学・雇用主からの支援体制を明確化
まとめ
留学生の資格外活動時間超過は、単なる規則違反にとどまらず、その後の在留活動全般に長期的な影響を与える重大な問題です。本事例が示すように、一度違反が生じると、その後の許可申請に大きな支障をきたす可能性があります。
申請人(留学生)は、正確な時間管理と早期相談を心がけ、大学は適切な指導とサポート体制の充実を図り、雇用主は法令遵守を前提とした雇用管理を徹底することが重要です。
そして何より、問題が生じた際には、隠蔽せず速やかに専門家に相談し、適切な対処を行うことが、被害を最小限に抑える最善の方法であることを、この事例は教えてくれます。
本記事は実際の事例を基に作成していますが、個人情報保護の観点から一部内容を変更しています。類似の問題でお悩みの方は、お早めに専門の行政書士にご相談ください。
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